近畿弁護士会連合会

また、「歩行不可」との記載に続けて 「ベッド上にて体位交換自力にてOK」との記載があることからすれば、 亡Bは歩行はできないが、体位交換については自力でできるとの趣旨と 理解することができる。
そのため、「歩行不可」との記載は、D病院で の指示事項ではなく、亡Bの運動能力について記載したものと見るのが 自然であって、この記載の解釈についての被告Cの主張は採用できない。
また、車イスで退院になったことについても、被告Cは、亡Bに動注 ポートとバルーン付導尿用膀胱カテーテルを留置しているためと、亡B が高齢のため大事をとったからであると主張するが、被告C自身が、ポ ートをつけたまま入浴や歩行等の日常生活は可能である旨を供述してお り(C〔11、12〕)、動注ポートを埋め込んでいたことが車イスを使 用する理由になるとは考え難い。
また、バルーン付カテーテルを留置し ていた点については、退院時に車イスを利用した点についての1つの理 由となり得るものではあるが、その理由として十分なものではなく、高 齢であったため大事をとったとの点についても、高齢であるが故にどの ような状態であったのかについての記録は診療録等からは一切明らかで はなく、車イスを用いた理由としてにわかに信用し難いところである。
以上の点からすると、亡Bが歩行できない状態にあったため、車イス での退院となったと推認できるというべきである。
(ウ) さらに、原告は、手術直後から、亡Bには右手が動かない等の片麻 痺の症状や、失語症の症状が出ていたと主張し、原告本人も、7月23 日から退院時まで亡Bは虚脱状態であり、右手が動かなかった等これに 沿う陳述及び供述をする(甲A8〔4〕、原告〔12、14、15〕)。
そこで、これらの原告の陳述及び供述の信用性について検討するに、 7月27日及び8月3日のA医大病院診療録に、事実経過の説明として 同内容の記載があることからすれば(乙A4〔48、95〕)、原告は、 A医大病院への再入院直後から、A医大病院医師に対し、同様の事実を 告げていたことが認められる。
このように、問題が生じた直後から上記 事実の訴えがあることからすれば、原告が、ことさらに虚偽の事実を述 べているとは考え難い。
また、原告の陳述及び供述する亡Bの状態は、 診療録等から客観的に認められる亡Bの病状と矛盾せず、自然なもので ある。
他方で、D病院の診療録等には上記の症状をうかがわせる記載はない。
しかし、同病院の看護記録には、個々の患者ごとの日誌的な記載部分が なく、いわゆる温度板に意識レベル等の項目化された記載があるにすぎ ず、病棟管理日誌等にも亡Bの状態につき極めて簡潔な記載しか存在し ない。
しかも、上記のように意識レベルの低下や歩行ができなくなるな ど手術前とは明らかに異なった状態が生じているにもかかわらず、これ を問題視した形跡もない。
これらのことからすれば、D病院における患 者の状態についての記録の正確性、ひいては、同院において、患者の状 態の把握等の看護自体が適切に行われていたかについて、疑問を抱かざ るを得ず、同病院の記録中に上記の症状に関する記載がないことは、原 告の陳述及び供述の信用性を減ずるものではない。
以上の点からすれば、原告の陳述及び供述は信用することができると いうべきである。
そして、原告の陳述及び供述からすれば、7月23日に原告が亡Bの 爪を切ろうとしたところ亡Bの右手が動かなかったこと、同月25日に 原告が亡Bにペンを握らせようとしたところ力が入らなかったことが認 められ、これらの事実からすれば、D病院入院中に、亡Bには右片麻痺 が生じていたと認められる。
エCT検査の結果
(ア) なお、上記1(4)イのとおり、D病院においては、7月23日午後 に頭部CT検査を行っているところ、この検査結果は存在しない。

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